NAGIEジャーナルVOL.10 山田翔太さん
一寸先は"光"、力を抜いて『ゆだねる』事で自然と良い方向に向かっていく。


No.10 山田 翔太さん/アスリート陶芸家

NAGIEを応援して下さる皆さまに、自身のサステナブルライフについて伺うインタビューシリーズ。第10回目は、アスリート陶芸家として唯一無二のライフスタイルを体現しておられる、山田翔太さんのサステナブルライフに迫ります。

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山田 翔太(やまだしょうた)アスリート陶芸家として活動。10代から陶芸を始め、都内にて作陶。遠州流茶道で茶の湯の世界を学ぶ。茶道具を中心としたうつわを制作し、銀座靖山画廊所属、百貨店で個展を開催。ラグビー、トライアスロン、ヨガなどのスポーツを通じて感じた「美意識」を、うつわに表現する独自の世界観を持ち、lululemonのアンバサダーとして、スポーツの世界とアートの世界をつなぐ活動をしている。またフランスなど海外でも個展や茶会を開催。

Official Website:https://ya-ma-shou.com/

Instagram:https://www.instagram.com/shotayamada14/

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1.大切なのはどんな事に対しても力を抜いてゆだねる事、それが自分の中の最大のパフォーマンスを引き出す

・アスリート陶芸家という唯一無二の肩書きをお持ちの山田さんですが、陶芸との出会いやここまで陶芸を続けこられている理由やモチベーションは何なのでしょうか。

陶芸との出会いは高校の授業でした。その当時の先生が丁寧に教えてくれた事もあり、陶の道に目覚めました。でもそれ以降は誰かに教わる事はしておらず、独学で続けています。

僕自身の中では陶芸を一生懸命続けているという感覚は無く、ただ作っている時の居心地と感覚が良いので続けています。現在は個展などの活動もさせて頂いておりますが、続けている理由は高校生の当時と変わらなくて、今までただ楽しくて続けてきたものが少しずつ評価いただきカタチとなり大きくなってきているという感覚ですね。

また私の作るお茶碗に描かれる景色は、釉薬が器に沿って流れ落ち、本焼きの火観の強さや釉薬の濃さによって変わる為、偶然性の強い景色が出来上がります。こうして出来上がった景色は、見る人によって富士山に見えたり動物に見えたりとその人の辿ってきた人生や感性、美意識の違いで変わってきます。これを「見立ての世界」と言うのですが、僕はこの世界観に陶芸の面白さを感じています。

     

・学生時代から続けられている陶芸に加え、現在はトライアスロンやトレイルランなどアスリートとしての一面も持たれておりますね。一見、全く異なる世界とも感じるのですが、これらの両立を通して気づかれた事や大切にしている事はありますか。

作陶している時、自分の感情が波打っている状態で器を成形しようとすると、それが土にも影響を与えてしまいます。そして何とか形を作ろうと力を入れても中々良いものは出来ず、身体も疲弊してしまいます。陶芸に於いて大事な事はをとるという事です。ろくろには中心の軸があって、しっかりと中心の軸がとれている時は、土が回転している事が分からないくらい揺れがなく綺麗な状態です。その時は、力を抜いてリラックスした状態で作れ、とても良い作品に出来上がります。

この事はスポーツにも通ずる点だと思います。たとえば、ランニングをしている時にも自分のフォームを気にし過ぎて走っている時は体に力が入り疲れるのも早く、良いパフォーマンスには繋がりません。自分の居心地の良いリラックスした状態で走っている時が一番良い結果に繋がると感じます。

僕は陶芸に於いてもスポーツに於いても、軸をとる為の準備をしっかりとし、実際に器を作る時や競技を行う時には、こうしようとか上手くやろうとかは考えずに力を抜いて「ゆだねる」という事を大切にしています。

 2. 一寸先は”光”、先の事は考えず今に全力を尽くす事で、自然と良い方向に向かっていく   

・学生生活を終えられた後就職されておりますね。また現在もアスリート陶芸家の傍ら会社員として勤められておりますが、陶芸家やアスリートへ専念するという事は当時お考えになられなかったのでしょうか。

僕にとっての陶芸は楽しんで取り組むものだったので、それを仕事にするという感覚が当時は無かったですね。2018年から個展を開いているのですが、当時はフルタイムの会社員と陶芸家を両立していました。現在は会社の方々の協力や支援もあって、「文化人×会社員」という働き方で勤務しています。個展を始めた2018年や2019年頃は、よく周囲の方々から「アーティスト1本にしないと成功しない」と言われていました。僕自身も陶芸をはじめアートの世界が厳しい事は理解していたので、そういった周囲の言葉に揺さぶられた時期もありました。しか改めて冷静に考えた時に、周りにはアーティストとして活動している傍ら生計を立てる為にアルバイトをしている方々も多く、自分はそういった環境を変えていきたいと考えるようになりました。

それからは、今僕が見ている世界は「まだ誰も見たことが無い世界」という感覚があるため、自分の軸そして環境を大切にして生きています。

・会社員としてアスリート陶芸家として、誰もが見たことない世界を進んでおられますが、何か今後の展開等を考えておられたりするのでしょうか。

僕は明確なビジョンやゴールを持たず生きています。そのため半年先の自分がどうなっているかも見えていない状態です。しかし「一寸先は闇」では無く、「一寸先は光」だと思っています。なぜなら見えないことが楽しくて面白いのであり、先が見えていたら面白くないと感じるからです。それは、自分が40歳、50歳になった時の姿が想像できてしまう事や、ビジョンを立ててしまうとそれに向かおうと今の自分をコントロールしてしまう事に繋がってしまいます。自分をコントロールするという事は力が入ってしまい良いパフォーマンスが出来なくなる事なので、僕はその時の流れに「ゆだねる」ことを大切にし、その一瞬一瞬に意識を持ち全力でやる。そうする事で自然と良い方向に進んでいくと考えています。

3.1点物に囲まれた生活の豊かさを伝えていきたい

・今の社会は、多くのモノとコトに溢れる中でSDGsやサステナブルなど地球人として取り組まなければいけない様々な課題もありますが、人々の生活も地球環境もより良い方向に向かっていくために、アスリート陶芸家として伝えていかれたい事はありますでしょうか。

1点モノの素晴らしさ、1点モノに囲まれた生活の素晴らしさを知って頂きたいです。僕は自分の作品を選んでいただいた方に、作品を孫の代まで繋いで欲しいという願いで制作しています。孫の代まで繋ぐ為には、大切に扱わなければなりません。私たち以上の世代が、モノを大切に扱う姿を自分の子供や将来の孫に見せていく事で、子供たちもその思いを継承し受け継いでいきます。

こうして一人一人が物を大切に長く使っていく事で無駄な消費や廃棄を減らす事に繋がっていきます。僕は長く大切に使って頂ける物の特徴として、作り手の顔が見えるモノ、モノ作りの背景やストーリーが見えるものであることが大切だと感じています。例えばお茶碗一つ手にとっても、そのお茶碗を作った作り手の顔が見え、たとえば作り手と会話した内容や手に入れた時のワクワクした感情などを手に取る度に感じ取れれば、普段の生活がより豊かになっていきます。1点モノに囲まれた生活の楽しさを知っていただければ、人々の物の選び方や消費習慣の変化にも繋がっていくと思っています。

NAGIEも限定受注生産という形を通して、お客様に洋服が出来るまでの過程やこだわりを知って頂ける機会を提供し、現在の大量生産で販売されている洋服が当たり前では無い事を伝えています。今後、NAGIEと一緒にチャレンジしていきたい事などはありますでしょうか。

NAGIEの洋服は僕も日頃から愛用していていろんな所で着ています。最近は自分のお茶碗を持って、山頂や屋外などカジュアルな場所でお茶を点てたりする機会も多いので、きっちりとしたシルエットで且つアスリート目線で動きやすさや機能性が備わっているNAGIEの洋服はとても使いやすく、他のブランドには中々無い特徴だと思っています。ですので、NAGIEの特徴を活かしたトレイルラン等のスポーティーなイベントをやってみたいですね。あとは、僕の作ったお茶碗を包む布や包装して携帯できる巾着の様な商品を洋服の端材から作れれば、お客様にお茶碗をお渡しする時のストーリーがさらに加わってより良い1点モノになるかもしれませんね。