コンテンツへスキップ

NAGIEジャーナルVOL.11 
四角 大輔さん  

No.11 四角 大輔さん/執筆家・森の生活者 ・Greenpeace Japan & 環境省アンバサダー

NAGIEを応援して下さる皆さまに、自身のサステナブルライフについて伺うインタビューシリーズ。第11回目は、現在ニュージーランド在住で地球環境への負荷を最小限したライフスタイルを実践されている四角大輔さんのサステナブルライフに迫ります。 

==============

Profile

四角 大輔さん

レコード会社プロデューサー時代に、10回のミリオンヒットを記録した後、ニュージーランドに移住。
湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営み、場所・時間・お金に縛られず、組織や制度に依存しない働き方を構築。第一子誕生を受けてミニマル仕事術をさらに極め、週3日・午前中だけ働く、育児のための超時短ワークスタイルを実践中。

==============

1. 自然と共に育った幼少時代、そして失われていく自然を目の当たりにした学生時代

-現在、ニュージーランドで自給自足、自然と共に生きる生活をしていますが、やはり幼少の頃から自然や外で遊ぶ事が好きだったのですか。またどのような学生生活を送られていましたか。

幼稚園に入る前から自然が大好きで、釣りやトレッキング、キャンプを父に教わり、竹の子やカブトムシを採りに自宅前の山に通っていました。夜明けとともに外に飛び出し、放課後は暗くなるまで外で遊んでいました。しかし当時は高度経済成長期のまっただ中。家の周りの開発がどんどん進み、今まで遊んでいた山や林、池や川が徐々に失われ、僕が中学生になる時には近所の自然は全て、無機質な住宅街になってしまい、僕からすると、愛する自然、好きな遊び場が壊されたわけで、歓喜する大人たちに対して静かな怒りを抱えていました。

近くに自然がなくなったので、中学でツーリング自転車に、高校からはオフロードバイクに乗り、自然を求めて行動範囲を広げました。大学ではバンライフを始め、日本中の自然を求めて旅をしました。でも行く先々で自然が壊されていく姿を目の当たりにして絶望しかけます。でも、自然への気持ちがより高まり、自然を守りたいという気持ちも高まりました。

 

-目まぐるしい環境変化の中、幼少・学生時代を過ごされておりますが、当時持っていた『夢』などはありますでしょうか。

小学生の頃から、大学生の頃までアウトドアに夢中でしたが、釣りが一番好きで、中でもフライフィッシングの虜になります。大学生の頃には川や海、湖などいろんな場所でフライフィッシングをしたのですが、湖のフライフィッシングが最も好きだと気づき、将来は湖のほとりで暮らすと心に決めます。日本中の湖を回って住む場所を探していた最中に、湖大国ニュージーランドに出会い、ニュージーランドの湖のほとりで暮らすのが夢となりました。

 

 

2. 働き方・日常生活・考え方… あらゆるものを軽くする事で得た仕事での成功体験と好循環

-ニュージーランドでの生活を夢みてられた四角さんですが、大学卒業後は一般企業へ就職されていますね。何か目的や経緯はあったのでしょうか。

自然界をサバイブする能力は学生の頃に手にできていたけれど、人間界を生き抜くサバイバル能力はゼロだった。世の中はしばらく資本主義社会だろうから、最低限のビジネススキルは必要だと思い就職をしました。

 

-就職された先でも良い成果を上げておられますね。

そうですね。結果としてビジネスの世界で成功した人と言われるようになりましたが、人生の最優先事項はニュージーランド移住です。だから入社時から退職まで、”出世”や”成功”に興味がなく、無欲でした。意図せず、この「無欲さ」が仕事をする上でとても強い武器になった。出世や成功を求めないから、会社にも誰にも忖度しないでいいし、そういう邪心が無いことで、発言と行動に自由度が増し、クリエイティブであり続けられました。

また会社員時代の僕は、生活習慣にこだわりました。「ちゃんと寝て休んで食べて運動する」という習慣を崩さなかったことが大きかったです。仕事で結果を出すと、仕事量が増えていきますが、そうなってからもしっかり休んでいた。日本人がしがちな、がむしゃらに不眠不休で働き、気合と根性で頑張っても短期的な結果しか出ません。長期的な成果を出せた理由は、ここにあるという事を伝えておきます。 

 

-無欲である事で心の負担を減らし、生活習慣を整える事で身体の負担を減らす、そうする事で仕事にも生活にも好循環が生み出せたという事ですね。一方で、現代を生きる人々は中々そういった生活を実現できていない方も多いかと思います。そんな方々へ伝えたい事はありますでしょうか。

 『働きすぎ』、日本が抱える最大の社会課題だと僕は思っています。この問題を解決したいと思い、最新刊『超ミニマル主義』を書きました。僕は、上司を自殺で、同世代や同僚を過労死で失っていますが、これは日本中で起きている事。日本は世界で一番労働時間が長く、睡眠時間が一番短い国です。有休消化率も、育児休暇の取得率も最低。そんなに頑張っているのに、労働生産性は先進国で最低です。それに引っ張られるかのように、健康とメンタルの問題を抱える人が年々増えていて、国民全体の幸福度も多くの途上国より低い。

最大の問題は、多くの人が、社会的弱者に手を差し伸べようとしない事です。例えば、階段でベビーカーを手に困っているママがいる。でも何人かは通り過ぎてしまう。なぜか。”忙しい”からです。”忙しい”の大半の理由は仕事です。こういったマインドが、人権や貧困、気候危機への意識の低さ(先進国最低)や、投票率の低さに繋がっている。でも、これらの社会問題や政治への無関心はいずれ、自分達の生活を脅かします。この原理を皆さんにも理解してもらい、自分自身の生活習慣を整えて、時間と心の余白を確保してもらいたいと思います。

 

 

  

-有難う御座います。我々NAGIEも現代を生きる人々に余白を提供すべく、をテーマに洋服を通して皆様の日常に心地よい循環を提供する事を目指しており、四角さんの考え方に通ずるものを感じます。

 

3. 気付かないうちに抱えていた”心の荷物”を降ろせた事で高まった日々の幸福感

-ニュージーランドへの移住後の生活を通して、心境の変化などはありましたでしょうか。

日本にいた時は、常に自己矛盾を抱えていました。東京で暮らしていると、環境負荷という視点で見るとどうしても加害者側に回ってしまう。更に、レコード会社のプロデューサーとしてCDの総売上2000万枚を記録しましたが、CDはリサイクルできなければ土にも還らない。昔から大量消費社会が嫌いだと言ってきたのに、それに大きく加担していた。

でも、音楽の仕事を辞めてニュージーランドに移住してからは、環境負荷を最小限に抑えて暮らせる様になって、自己矛盾を解消する事ができた。この自己矛盾という「心の大荷物」を降ろせた事でストレスが消え、脳のパフォーマンスが高まりました。何より、毎日の幸福度が高まったことが、一番大きなギフトですね。

 

-心の荷物は我々も知らず知らずのうちに抱えてしまうものですよね。心の荷物を抱えない様に、また抱えてしまっても下ろしていくように意識されている事などありますか。

毎日、”心に嘘をついていないか”を自分に問いかけています。自分への嘘こそが、さっき話したように脳の負担になるからです。そのためには、”今生きていて何が一番楽しいか、何が心地いいか、何に感動するか”を問いかけます。これは僕の癖で、小学生の頃からやってきました。例えば、野球をやっていた頃は、バットの芯でボールを捉えた瞬間だった。その瞬間を得るために、他のことは全て後回しにする。

こうやって、自分の心の声、本音を知っておく事で、人生の優先順位がハッキリしてブレずに生きていけるんです。逆に、この本質的な問いかけをせずに生きていると、好きでもない事や良心に反する事を無自覚にやってしまいます。

ぼくはこの習慣のおかげで、大切なことに一点集中できる、ミニマルな生き方が出来ていると思います。ちなみにシンプルとミニマルの違いは、シンプルはそぎ落としたことで特徴がなくなる事、ミニマルはそぎ落とした結果ある一点を際立たせる事を言います。つまりミニマル主義というのは、余計な物・コトを最小化して、大事なものを最大化させる事です。この考えで僕は、人生をデザインしてきました。

 

-自分の軸を決めておく事で、余計な選択や行動を起こさずに生活できる。それが結果的に仕事にも日常にも好循環が生まれていくという事ですね。

 

4. “足るを知る”=これさえあれば自分はやっていけると気づけた時に、本当の幸せと平穏が訪れる

 

-現在の四角さんの生活にNAGIEの商品がどう寄り添っているか教えてください。

自分自身を大事にすることを最優先して生きていたら、ミニマル主義に行き着きました。そもそも、人は一人で生きていけないから、パートナーや家族や仲間が必要です。自分のためにも、その人たちを本気で大切にしようとする。そのためには健全なコミュニティが、健全な国が必要です。社会や政治にコミットして、コミュニティや国を健全にできても、地球が不健全であればすべて無意味になる。

つまり、自分を大切するとは、他者や自然環境を大切にすると同義なのです当然、自分の着る服はすごく慎重に選びますが、NAGIEの服はまずデザインが良く、リサイクル素材100%だから、自分の心が喜びます。そして、自然破壊の根源である大量生産・大量消費社会に、「受注生産」という手法で挑む姿勢に心から共感しています。

 

-有難う御座います。人々の『働きすぎ』が取り除かれれば、洋服の買い方にも変化が起き、地球環境にも、社会にも良い循環が生まれる事をNAGIEも信じております。

人間も自然も本来はスローなのに、今の社会はあらゆる事がファストになっている。ファストファッションが代表的ですが、美しきスローな価値観に皆を引き戻したいと思っています。心から着たいと思ってオーダーしてやっと届いた服と、安いからなんとなく買った服、どっちを大切にするかと言われれば絶対に前者です。そういった美意識を呼び起こせるNAGIEは、ビジネスを利用した社会活動でもあると思っています。

 

 

-最後に、四角さんの今後のライフスタイルをお聞かせください。

僕は、環境負荷を極端なぐらいミニマルに抑えて暮らしています。よく「大変じゃないですか」とか「ストイックですね」とか言われますが、めちゃくちゃい楽しくて気持ちいい。これって、人類史の99%の期間を自然と共に生きてきた人間の根源的な喜びなんです。

人間の幸福度は、収入と物資的な豊さが、ある一線を越えるとそこで止まってしまう。それは年収2000万円以上といった話ではなく、数百万円の所で幸福度はピークを打って、そこからいくら稼いでも、モノを買っても幸福度は上がらないという統計が出ているんです。日本人のほとんどはその基準をクリアしています。

これまで65ヵ国を旅してきたら言えますが、日本は世界一便利でモノが多いです。しかも安全で治安も良い。なのに幸福度が高くない。幸福度は一定の所から上がらなくなるのに、「もっと稼いでもっと買わなきゃ」と、大切にすべき人や大事にすべきことを後回しにして、日本人は過重労働します。これが幸福度が低い原因です。

逆に、本当に大切な人、大切なことに集中するためにミニマルに働き、暮らしていると、「これさえあれば、この人さえいれば自分は生きていける」という、足るを知る境地を手にできます。それは、「もっともっと」という不安や焦りではなく、平穏です。そんなにモノはいらないし、お金もかからない。でも心は満たされている。

このことを出来るだけ多くの人に知ってもらう為に、引き続き執筆活動を続けたいと思っています。大量生産・大量消費というシステムが地球上から消える日が来ることを願って。